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第10回構造コラム:「フックコーナー」から考える統計学1

本コラムでは、専門的な知識をより分かりやすく解説し、業務に役立つ情報を提供できればと考えております。

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1.短期基準接合耐力の評価

 

弊社のホームページでユーザー登録をしていただくと、各製品の試験成績書がダウンロードできます。
製品の耐力値は表紙の試験結果を見ることで確認ができますが、この耐力値はどのように決定されているのでしょうか。

 

フックコーナーの試験成績書を見ると、評価方法や評価結果には「ばらつき」や「統計」に関する情報が記載されていることが

解ります。今回は、ばらつきや統計を理解する前準備として、成績表の見方や評価の仕方、どこにばらつきや統計の基本が

含まれているのかを紐解いてみましょう。

 

【評価方法】

 

 

【評価結果】

 

 

2.評価結果の見方

 

 ●2/3Pmaxと降伏耐力Py

 

  評価結果の算定方法は、試験結果より得られた降伏耐力Pyと最大荷重Pmax2/3の値の各平均値に、

  ばらつき係数を乗じて算出した値を比較し、小さいほうの値を短期接合基準耐力とします。

 

  

  試験で測定した荷重変位曲線の包絡線を作成し、完全弾塑性モデルを用いて降伏耐力Pyと最大荷重Pmax

  2/3の値の各平均値を求めます。

 

  降伏耐力Pyは、材料が荷重を受けて弾性変形から塑性変形へ移る境界となる応力のことです。

  弾性変形は、荷重を除去すればひずみが消えて物体の形も元に戻る領域を指し、塑性変形は荷重を除去しても

  ひずみが残り、物体の形が元に戻らない領域を指します。

 

  2/3Pmaxは、最大荷重Pmaxに安全率2/3を掛けた値です。

  安全率は、材料強度のばらつきや荷重の見積もり誤差などの不確定な要因を考慮して、想定以上の応力がかかっても

  部品が壊れないようにするために設定します。

 

 ●ばらつき(散らばり)

 

  性能の評価には、ばらつきが考慮されています。ばらつきとはデータの散らばり具合のことで、上記で求めた各平均値に

  ばらつき係数を乗じて値を比較し、小さいほうの値を短期接合基準耐力としています。

  平均値は、データ全体の傾向を捉えたり、データ同士を比較する際に使うことが多い代表値ですが、平均値が同じでも

  ばらつきが異なればデータ全体の特性も大きく変わります。

 

  例えば、下記の100人のテスト結果についてグラフを見てみましょう。

  

  どちらも平均点は58点ですが、データのばらつきは大きく異なります。

  このように、データを正しく把握するためには、平均値(代表値)だけでなく、ばらつきも考慮して判断することが重要です。

 

 

3.統計学-正規分布・母集団・標本

 

  評価方法のばらつき係数には、「母集団の分布を正規分布とみなし、統計的処理に基づく信頼水準75%の95%下限許容

  限界値をもとに算出する」とあります。

  正規分布は、平均値の周りにデータが最も多く集まり、平均から離れるほど少なくなる左右対称のベルカーブを描く

  連続型確率分布です。身長、体重、偏差値、寸法誤差など、自然に生じる誤差や個体差はこの正規分布に従うとされ、

  統計学において最も基本的な確率分布です。

 

  【正規分布の特徴】

   ・平均値、中央値、最頻値の3つが一致する

   ・平均値を中心に左右対称

   ・横軸は確率変数、縦軸は確率密度を表す

   ・平均値から標準偏差±1個分の範囲にデータの約68.3%が含まれる

   ・平均値から標準偏差±2個分の範囲にデータの約95.4%が含まれる

   

  母集団とは、「知りたい対象となる要素(個体)の集合全体」のことです。

  例えば、「フックコーナーの耐力を知りたい」とした場合、製造される全てのフックコーナーが母集団です。

  また、この母集団の性質を推定するために、その一部を抽出した試験体(サンプル)を標本といいます。

 

  このように、金物の評価は試験結果をもとに統計的処理を行い、標本から母集団の性質を推定します。

 

  次回は、平均や標準偏差など、統計学の基礎について考えてみましょう。