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●ホールダウン金物とは?
ホールダウン金物は、地震や台風などによって柱が土台や梁から抜けないように取り付ける補強金物のことです。
(公財)日本住宅・木材技術センターが定めるZマーク表示金物では、引き寄せ金物と呼ばれています。

<タナカ:ビスどめホールダウンU> <Zマーク表示金物>
●ホールダウン金物が必要な理由
地震や台風時、建物には「水平力」と呼ばれる横方向の力が作用します。
耐力壁に水平力が働くと、柱には横架材から柱を引き抜こうとする「引抜力(ひきぬきりょく)」が生じます。
また、その大きさは耐力壁の性能(壁倍率)に比例して大きくなるため、耐力壁の性能に応じた金物が必要となります。
大きな地震被害をもたらした阪神・淡路大震災の後、平成12年の建設省告示1460号「木造の継ぎ手及び仕口を定める件」により
筋かい端部と軸組との止め付け部,軸組端部の柱と主要な横架材との仕口及びその他の緊結方法が具体的に明示され、必要な
引抜耐力以上の接合金物で緊結することが義務付けられました。

●引抜力のメカニズム

耐力壁に水平力が作用したとき、支点反力V(引張・圧縮)は水平力P × 壁高さh/支点距離(壁長)Lで求められます。
上の図で考えると、耐力壁が負担する水平力Pは、P = α・P0・L [kN]
このとき支点に生じる引張反力Vtは、Vt = P・h/L = α・P0・h [kN]
周辺部材による曲げ戻し効果と鉛直荷重による押さえ効果を省略して考えると、
引抜力T(上向き)=引張反力Vt(下向き)となります。
●曲げ戻し効果と鉛直荷重による押さえ効果
実際には、柱には常時鉛直荷重が作用しており、また、周辺部材による曲げ戻し効果が作用しています。
N値計算では、鉛直荷重による押さえ効果と周辺部材による曲げ戻し効果を係数として定め、下記の算定式で
引抜力を計算できます。
① 平屋建て、2階建ての2階部分、および2階建ての1階で上に2階がない部分の柱
N(引抜力)=(A1×B1)× H1/2.7-L
A1:検討する柱の両側の壁倍率の差(筋かいの場合は補正値を含む)
B1:周辺部材の押さえ効果を表す係数0.5(出隅の場合0.8)
L :鉛直荷重による押さえ効果を表す係数0.6(出隅の場合0.4)
H1:当該階の横架材の上端相互間の垂直距離(3.2m<H1≦6.0m)、ただしH1≦3.2mの場合は2.7
② 2階建ての1階で上に2階がある部分の柱
N(引抜力)=(A1×B1)× H1/2.7 +(A2×B2)×H2/2.7 -L
A1、B1、H1は①の平屋建て等の柱の場合と同じ
A2:検討する柱に連続する2階の柱の両側の壁倍率の差(筋かいの場合は補正値を含む)
B2:2階の周辺部材の押さえ効果を表す係数0.5(2階が出隅の場合0.8)
L :鉛直荷重による押さえ効果を表す係数1.6(出隅の場合1.0)
H2:当該階に連続する壁における2階の横架材の上端の相互間の垂直距離(3.2m<H2≦6.0m)、
ただしH2≦3.2mの場合は2.7

●ホールダウン金物の種類と特徴
・ビスどめホールダウンU
(公財)日本住宅・木材技術センターによる性能認定品(Sマーク )です。
15kN用、20kN用、25kN用、35kN用の4種類があり、必要耐力に合わせて使用します。
カラーシールで耐力が一目でわかる定番のビスどめホールダウン金物です。

・ビスどめホールダウンHi
(一財)建材試験センターの品質性能試験済商品です。
Hi28、Hi43の2種類で、Hi28は28.2kN、Hi43は43.7kNまでの引抜き耐力に対応するビスどめホールダウン金物です。
従来品に比べてビスの本数が少なく、平ワッシャーも不要なため施工性が向上します。

●よくある質問
Q.ホールダウン金物の取付高さに決まりはありますか?
A.ホールダウン金物は、種類によって「締め代」が決まっています。小口(こぐち)からビスまでの端距離は
耐力に影響するため、商品ごとに定められた締め代を守って施工する必要があります。
Q.長いビスに変更すれば枠材が付いている柱に使用できますか?
A.付属の専用ビス以外を使用すると試験と条件が異なってしまうため、耐力の担保が出来ません。
枠材の付いている柱には、枠材用のホールダウン金物をご使用ください。